演じる側から描く側へ 立花里子『絵ロ本』の話
角子 万太郎さん、今日は本を持ってきてますね。
万太郎 これだ。『絵ロ本』。
角子 エロ本じゃなくて、絵ロ本。
万太郎 そう、絵をかけてある。うまいだろう。
角子 タイトルの時点で勝ってますね。
万太郎 勝ってるんだよ。立花里子さんが描いた漫画だ。
角子 女優さんですよね。
万太郎 現役の頃を知ってる。二〇〇〇年代だな。
角子 その人が漫画を描いたんですか。
万太郎 描いた。しかも自伝だ。自分の性の歴史を、最初から順に。
角子 自分で描くんですね。
万太郎 そこが凄い。文章を誰かに書いてもらうんじゃない。絵から全部本人だ。
角子 絵柄はどんな感じですか。
万太郎 可愛いんだよ。それがまた効いてる。
角子 内容とのギャップってことですか。
万太郎 ギャップというか、可愛いから読めるんだ。生々しい話を、ふわっとした線で描いてる。
角子 重くならないんですね。
万太郎 ならない。淡々としてる。だから逆に刺さる。
角子 自伝って、書くの大変じゃないですか。
万太郎 大変だろうな。しかも性のことを、順を追って全部だ。
角子 普通は書けないですよね。
万太郎 書けない。恥ずかしいとか、そういう次元じゃないと思う。
角子 じゃあなんで書けたんですか。
万太郎 そこなんだよ。俺が唸ったのはそこだ。
角子 どういうことですか。
万太郎 この人、自分の話を素材として見てる。
角子 素材。
万太郎 そうだ。恥ずかしがってない。かといって開き直ってもない。
角子 冷静ってことですか。
万太郎 冷静だ。自分を外から見てる目がある。それがないとこの本は描けない。
角子 言われてみると難しそうですね。
万太郎 難しい。俺だって自分の話なんて書けんぞ。
角子 万太郎さん、この前ずっと自分語りしてましたけど。
万太郎 あれは口だ。文字にして残すのとは違う。
角子 都合がいいですね。
万太郎 都合はいい。だがこの人は残したんだ。
角子 それが凄いと。
万太郎 凄い。しかも面白い。ここが一番大事だ。
角子 面白いんですか。
万太郎 面白いんだよ。読み物として成立してる。
角子 告白本じゃないんですね。
万太郎 告白じゃない。作品だ。ちゃんと構成されてるし、笑えるところもある。
角子 才能ってことですか。
万太郎 才能だ。演じるのと描くのは全然違う技術だろう。両方できるやつは少ない。
角子 演じてた人が、描く側に回ったんですね。
万太郎 そこも面白い。撮られる側にいた人が、今度は自分で構成して見せてる。
角子 主導権が移ってますね。
万太郎 鋭いな。まさにそれだ。
角子 ちょっと読んでみたくなりました。
万太郎 読め。これは本当に良い。
角子 珍しくちゃんと説明できてますね。
万太郎 この本については説明できる。
角子 この前は見ればわかるでしたけど。
万太郎 あれは別の話だ。
角子 都合がいいですね。
万太郎 二回目だぞ、それ。
